コラボレーティヴピアニストとしての仕事
歌手に合わせてそのアリアを演奏するには、歌詞の内容やその背景も研究せねばなりません。
イタリア語から日本語への翻訳がたくさんあります。
私は今年もニューヨークでコンサートをします。そこでは、ソロプログラムに加えて、2人のオペラ歌手と共演します。1人の歌手はベッリーニの「ノルマ」から「清らかな女神よ(Casta diva)」を歌い、もう1人の歌手はヴェルディの「マクベス」から「空が急に翳ったように(Come dal ciel precipita)」を歌います。数日前、オペラ歌手のバリー・アレクサンダー氏との最初のコーチングセッションを受けました。それにより、コラボレーティヴピアニストとして何が重要かをより良く理解できるようになり、私は以前は考えていなかった多くのことに気付きました。
まず第一に、歌手のために演奏することは、室内楽で演奏したり、オーケストラのソリストになることとは異なります。歌手のために演奏するピアニストは、ソリストにとってのオーケストラにあたるものであり、歌手がしていることすべてに集中することが最も重要です。また、歌手が歌いながら次の準備をしているわずかな仕草に目を向けることも忘れてはなりません。私は楽譜をすべて理解、暗譜して演奏中も常に彼らを見て、歌手が次に何をするかを察知するよう心掛けるようにしました。
ミュージシャンとして学んでいる技術を、コラボレーティヴピアニストとして活用できる機会を得られてとても嬉しく思います。このような経験は、ピアニストにとってもアンサンブルの理解を深め、集中する方法、そして演奏をスムーズに進めるために必要なことを予測するのに役立つと思います。
また面白いことに、両方のアリアで歌手が歌う旋律がピアノの演奏と完全に一致している部分もあるのです。ですからより一層,歌手が出す小さなサインにも注意を払い、あらゆる点で彼らにしっかりと合わせるようにしなければなりません。歌い方は同じ歌手でも一定ではありません。これは本当に難しいことですが、この経験を活かし、さらに上を目指そうと思います。